今週の１シーン
『僕が君を好きな理由（ワケ）』
『僕が君を好きな理由（ワケ）』
「今度、紅葉でも見に行こうか？」
僕の提案に、彼女は怪訝そうな目を向けてきた。どうやら僕の口から『紅葉』なんて言葉が出てきたことが不思議でたまらないらしい。
「なんだよ、たまには僕だってそういう物が見たくなる時もあるさ」
「う〜…ん。そりゃそうなんだろうけど……。いつも出かけるといったら『野球観戦』とか、『ドライブ』とかしか言わないあなたの口から、まさかそんなロマンチックな言葉が出てくるなんて。な〜んか、怪しくて……」
「失礼な！ 僕だってたまにはそういう時だってあるさ。それに……」
「ん？」
僕は近くに落ちている雑誌を拾った。彼女が少し前に読んでいた情報誌で、『見ごろの紅葉特集』が今号の目玉になっている。
「これ読みながら、行きたいって呟いてたのは誰だよ。まったく……、行きたいなら素直に言ってよ。僕はそこまで鬼じゃないよ」
彼女は一瞬キョトンとしていたが、すぐに顔を真っ赤に染めてうつむいてしまった。
あーあ、可愛いなぁ、まったく。こういう所を見せられるから、僕はこの子のことが好きでたまらないんだろうなぁ、たぶん。
